いつもここにいるということ
20歳もそこそこの若者が事務所で緊張している。わたしは劇場を初めて使ってもらう団体の代表とは面談をするようにしている。京都の中では高い劇場費だ。それをわざわざ払ってまでどうしてここで舞台公演をしたいと思うのか、これからはどうしていくのか。いろいろと聞いてみる。その応えによって、だったら劇場としてはこんな協力をしましょうかとか、あまり考えがまとまっていないようならこんなアイデアもありますよと提案してみる。話をして多少はリラックスしてくれたのか最後に笑顔で頑張りますと彼は言う。そして一度きりのこともあれば、この劇場で公演を続けて試行錯誤を繰り返しているところもある。
そういう若い作り手は絶えず現れる。わたしも初めてこの劇場を訪れたときはそうだ。その時には自分がゆくゆく劇場スタッフになるとは思いもしなかったけれど、こうして十年以上もここにいる。このフェスティバルが終わってしばらくするとわたしはここを去るのだけれど、その後もここには誰かがいるだろう。新たな作り手が、劇場スタッフが。もちろん老いた者が戻って来ることもあるだろう。
いつも誰かがここにいるということ。誰かがやって来ては誰かが去るその繰り返しだ。そんな場所が劇場ということでもある。
今回のフェスティバルは、これまでとこれからの橋渡しとして位置づけたい。ご来場お待ちしています。
アトリエ劇研ディレクター 田辺剛