物語について
物語は、家の召使いの如くアルルカンがほうきで舞台上を掃いているシーンから始まります。観客に向けて話ができる事に気付いた彼は、日本の観客に自分の物語を嘘かまことか語り始めます。
彼は、ヨーロッパ演劇の古典的モデルである19世紀の古典劇「コメディアデラルテ」の演技作法に則り、パントマイムから始め、演劇史の中で様々に演じられてきたアルルカンの古典的な要素をいくつか引っ張りだしてアルルカンを演じていきます。しかし、アルルカンの陰に隠れる悪魔は、革の仮面の中に潜み、俳優の言葉と身体を奪おうとします。そして、悪ふざけに飽きたこの超自然的存在は、舞台を乗っ取り、悪魔としての己の正当性を訴えます。悪魔は、俳優や脚本家に対していつも怒り狂っています。自分のアイデンティティが間違って表現されていると思っているのです。悪魔は自分自身がいかにすごい存在なのかについて語ります。中国で鍾馗(しょうき)に会い、日本で天狗に会った事について説明をしますが、最後には薄い空気になって消えてしまいます。