撮影:井上嘉和
ひとがいる。ひとをみる。ひとをきく。
いろんなひとの、いろんなかたち。
ゆるやかに、あるいは突然に、私たちの身体は変容していきます。
数十年という時間の流れの中で偶然に発生し、確実に消失していく人の形。
私たちにとって最も身近で最もままならぬものは我々自身の身体なのかもしれません。
2011年初夏に月眠ギャラリーにて上演した連作「迷図」では空間の変化と身体との関係を追求しました。
ダンスと演劇、それぞれの分野で身体に拘り続けてきた黒子とサカイが今回着目したのは、時を止めた身体・・人形。
本作は、球体関節人形とダンサーとのデュオを中心に、変わりゆく身体と過ぎゆく時間を描く試みです。
闇の中、沈黙する「ひとのかたち」に、目をこらし耳を澄ましてみる。
物言わぬ人形と、言葉を語らぬダンサーが出会うとき、声なき歴史が立ち現れる。
そんな予感が、するのです。
[構成・美術]
サカイヒロト
[出演]
草壁カゲロヲ(VOGA)
黒子沙菜恵
[スタッフ]
音楽/石上和也
映像/タナベリョウヤ
舞台監督/渡川知彦
照明/筆谷亮也
制作協力/植田宏美
2/09(土)14:00/19:00
2/10(日)13:00/17:00
一般 前売2,500円/当日2,800円
学生 前売2,000円/当日2,300円
ペア 4,500円(限定10組/劇場取扱なし)
・WI'RE
・http://www.k5.dion.ne.jp/~aaiioo/info.html
・http://hito-gata.blogspot.jp/
・GF8チケットセンター
・アトリエ劇研 075-791-1966(10:00~18:00)
WI'REについて−空間造形の魅力
美術ギャラリーで上演された『迷図#1』。広いとは言えない空間に、オブジェがあって映像がある。音がある光がある。それらのなかに女性(パフォーマー)が一人いる。空間はさまざまに変化する。明滅が延々と続くのかと思えば眩しいほどに一面が照らされ、あるときには暗闇になる。ノイズのような音ばかりではなく不意にことばも聞こえる。そこは檻が置かれた狭い空間かと思えば奥の壁が取り払われて空間が広がり、そこに進んだ彼女は映像のイバラに捕われもするだろう。
空間はめまぐるしく変わっていく。その変化は決してパフォーマーを引き立てるためではない。むしろ空間が変わるたびに彼女は新たな環境に投げ出されてしまうことになる。空間の変化に惑わされ振り回されるようにしてそこにいざるをえない。
人間はその進化を誇示するように巨大で複雑な建造物を作り、Webに至ってはその全体を把握することはもはや不可能だ。深い森に迷わないように科学技術は進化してきたはずなのに、結局わたしたちは迷い込むようにしてしかこの世界にいることができない。『迷図#1』はそうした世界とわたしたちのありようを提示しているように思って興味深かったし、その提示の仕方が、オブジェや映像、光や音の素材をパフォーマーと等価に(あるいは人以上に優位に)扱った空間造形によることもそうだ。
演劇とは言えない。ダンスとも言いづらい。けれどもそうした曰く言いがたい舞台作品を(せめて一つは)今回のフェスティバルではお呼びしたいと思っていた。WI'REのサカイさんはOMS戯曲賞を受賞した劇作家でもある。けれども久しぶりに拝見するとずいぶんと既存の"演劇"からは遠い場所にいらっしゃるようだ。ダンサーの黒子沙菜恵さんとの協同作業というのも興味深い。
今回のフェスティバルでは『ひとがた』というタイトルの作品を上演するという。アトリエ劇研の舞台空間をどのように造形してくれるのか期待したい。
アトリエ劇研ディレクター 田辺剛