『旅行者』日韓合同プロジェクト『旅行者』6/18(金)-20(日)

 
 
1993年設立。フヨンパフォーミングアーツセンター(旧フヨン小学校)を本拠地とし数々の作品を発表する。「言葉(セリフ)」中心の演劇的方法から脱皮し、声(Voice)、動き(Movement)、踊り(Dance)、
打楽(Percussion)など世界が共感する普遍的な手法を軸に、人間が活用出来るあらゆる交感手段の中から、舞台表現として適する方法を模索している。様々な国の観客や、違う言語を持つ人々の演劇、舞踊、音楽、美術など多様な分野の芸術家たちと交流しながら、文化背景や言語を超えて、普遍性を土台に情緒を分ち合うことが出来るような演劇性の獲得を目指している。
 

[日時]

 6月18日(金)~20日(日) 計3ステージ

 18日(金)19:30

 19日(土)19:30 

 20日(日)14:00

 *韓国・ウォンジュ公演=6月

  ソウル公演=7月

[料金]

 2,800円(当日、前売りとも)

  *演劇祭「観劇回数券」使用可

【チケットの予約はこちらでできます】


[脚本]田辺剛

[演出]ウォン・ヨンオ(劇団ノットル)

[出演]平岡秀幸

    広田ゆうみ

    宮部純子

    森衣里

    イ・ジィヒュンLee jihyun

    イ・ユナLee euna

    ユム・ジュヨンEum juyoung

    ユン・サンドンYun sangdon

[照明]魚森理恵

[音楽・演奏]Jimy sert

[舞台監督]西田聖(京都公演)

[演出助手]オ・テクサンOh thacksang

[プロダクションマネージャー]

 ベク・ヨンスクBaek kyungsuk

[助成]日韓文化交流基金日韓共同未来プロジェクト、平成22年度国際芸術交流支援事業、京都芸術センター制作支援事業

URL]劇団ノットル


ディレクター・田辺剛より

 拙作『旅行者』はわたし自身の演出で2006年に京都で初演、第14回OMS戯曲賞の佳作受賞を経て、2008年に大阪・なんばの精華小劇場で再演された。異邦人の姉妹が自分の故郷を目指して旅する話だが、今までの上演では登場人物たちが帰属する国家や民族の差異について焦点をしぼる演出はされなかった。今回、ヨンオ氏による演出では日本人と韓国人の俳優による混成チームで、そこには劇以前に言葉や身体の差異が生々しくある。リハーサルは英語で行われているようだ。複数の言語と、母国語の違いによってまたその身体にも差異がある。そうした差異は異邦人の帰郷という物語にうまく反映するだろうし、そうなることで日本人だけの上演では観られないモノが出来上がるだろうと思うのだけど、実際の作品創作には困難もつきまとうに違いない。それは劇そのものの成立をも脅かすかもしれないのだ。そうしたなかで、そんなスリリングな状況であの劇世界がどのように立ち現れるのか楽しみで仕方が無い。このような試みはなかなかあるものではないからだ。

劇団ノットル (Nottle Theatre Company):

2006年3月に京都で初演し、第14回OMS戯曲賞佳作を受賞、2008年には大阪で再演された劇作家田辺剛の代表作が、韓国の演出家ウォン・ヨンオと、日本と韓国の俳優によって新たな作品として生まれ変わる。京都で初演に引き続き、韓国のウォンジュ、ソウルにて公演。


 知らない時代の、遠い世界の話。大きな戦争があって、その混乱がやっとおさまりそうな頃のこと。

 三人姉妹の父が死んだ。母は早くに亡くしていたから、彼女たちはついに自分たちで生活していかなければならなくなった。ところが途方に暮れる間もなく彼女たちは町を追放されてしまう。

 彼女たち一家は異邦人だった。亡き父は自分が死ねば娘たちが町を追放されることを予想していて、そうなれば故郷を目指すほかないことを娘たちに告げていた。そのことばにしたがって彼女たちは故郷を目指すことにする。それは海を越えた向こうにある「東」とよばれるところだ。ろくに荷造りもできないままに町を出た三人姉妹は、これも父が生前言ったように、叔父をたずねて故郷へ帰るための援助を得ようと思っていた。叔父の住む村は荒野のただ中にポツンとあった。三人姉妹はひたすら歩いた。

 やっとのことで村にたどり着いたが、しかし父に教えられていた住所は間違っていた。そこはただの他人の家で彼女たちは途方に暮れる。そこへ一人の女性が現れた。彼女は自分もまた姉妹の一人なのだと言う。しかし三人姉妹は誰も彼女のことを覚えていなかった。

 とにかく彼女たちは疲れていた。戦争の混乱を生き抜いてやっと落ち着いたと思ったら父を亡くし旅に出なければならなくなる。叔父は見つからない。知らない女が現れる。そして港はまだまだ遠い。