空間再生事業 劇団GIGA『漂着』6/26(土)+27(日)
空間再生事業 劇団GIGA『漂着』6/26(土)+27(日)
劇場ディレクター・田辺剛の書き下ろし新作!
知らない時代の、遠い世界の話。
村でもかつて噂になったことがある。海岸沿いにポツンと建つその家は、街から来た資産家の別荘なのだと。引退するほどの年でもないのに一人そこに住み、浜に流れ着いた壜を拾っては家に持ち帰る。なんのためかは分からない。あるとき村人が声をかけたが、無愛想な返事があるだけでそれ以上の話にはならなかったという。そういうことだから資産家と村人たちとの交流は無く、また別の噂が広まる頃にはその家のことも忘れられていった。
それは近くにある国境のことだ。最近また警備兵が増やされるとかで、村人たちを不安にさせている。国境付近でなにが起きているのかこれもはっきりしたことが分からない。ただ、穏やかではない空気が漂い始めているのを誰もが感じていた。
冬になると荒れる海だが今はまだ波も静かだ。けれども確かに夏は終わりを告げ、季節は変わろうとしていた。
[日時]
6月26日(土)+27日(日) 計3ステージ
26日(土)14:00,19:00(※1)
27日(日)14:00(※2)
※1,2=終演後アフタートークあり。
ゲスト:
※1=田辺剛(下鴨車窓・アトリエ劇研ディレクター)
※2=ごまのはえ(ニットキャップシアター)
[料金]
一般2,500円/学生2,000円(要学生証)
*当日券はそれぞれ500円増し
*日時指定・全席自由
*演劇祭「観劇回数券」使用可
【チケットの予約はこちらでできます】
[作]田辺剛
[演出]山田恵理香
[出演]猛者真澄
五味伸之
入江超法
[演出部]
青柳曜
宮原清美
佐藤まい
[舞台監督]
糸山義則(ステージクルーネットワーク)
[美術]嵐男
[小道具]石橋さやか
[音楽]吉川達也
[照明]
永井辰弥(ステージクルーネットワーク)
[音響]岩切秀樹(九州舞台)
[衣裳・メイクデザイン]
佐藤美憂奇(MUSES)
[宣伝美術]mis@o
[チラシ絵]山下耕平
[制作]空間再生事業 劇団GIGA/高橋知美
[URL]空間再生事業 劇団GIGA
〈ディレクター・田辺剛より〉
劇団GIGA(以下、GIGA)の公演ではないけれど、山田恵理香さんの演出で2009年3月に京都でも上演された『なにもしない冬』は衝撃だった。かつてのアングラというと語弊があるかもしれない。関西にお住まいの方なら『闇光る』以前の「遊劇体」の舞台を連想したと言えば少しは通じるだろうか。それはMONOっぽい上演を期待した観客が途中で帰ってしまうほどで、わたしは始め呆然としてそれからはまったくの釘付け状態だった。確かに一般に言われるような土田戯曲の面白さに焦点は当てられていなかったが、戯曲が持つ本質は山田さんなりの仕方で射抜かれていると感じた。そう、山田さんはテキストの本質を嗅ぎ取るという演出家としての素質、その嗅覚を確かに持ちかつ独特な仕方で表現できる人なのだと、アトリエ劇研にどこかを呼ぶなら山田恵理香さんの作品だとそのときにわたしはもう決めていたのだった。
そして彼女が所属するGIGAは彼女の演出をもっとも純度が高く実現できるメンバーで構成されている。昨秋、福岡で観たサルトルの『蝿』はGIGAの本公演。歓楽街・中洲を背景にした野外劇で、劇の舞台となるアルゴスの町は人々の情念と欲望が渦巻くところだが、それがハードロック?の生演奏も加えた演出で見事に中洲の街に重ね合わされたのだった。さて、今回GIGAが上演する作品『漂着』は、今回の演劇祭に参加してもらうにあたってわたしが書き下ろした新作だ。わたしは山田さんとGIGAのメンバーによる上演に耐えうる、強いテキストを書こうとそのことに腐心した。彼らのエネルギーに打ち負かされることのないように。もはやこれは、わたしのテキストとGIGAとのまぎれもない戦いだと思っている。その勝負の行く末をぜひご覧いただきたい。
空間再生事業 劇団GIGA:
『埋められた子供』2006年@静岡/福岡