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村川拓也

『Fools speak while wise men listen』ver.b

演出|村川拓也


文・川崎歩



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 この作品には4つの、日本人と中国人の会話のループと、ループしない1人の女性が存在した。4つのループはそれぞれ5回くらい繰り返される。
DSC_0951.JPG 最初のループ。恋愛や仕事に関してリア充の中国人に対して、怒っているように見えるアルバイトの日本人の女性との会話。
 2番目のループ。南京出身です。と中国人の自己紹介。その後のわざとらしい沈黙の数秒。心斎橋が過去に日本人が多数であったときの記憶と比べて、中国人が多数になった時の恐怖を語る日本人と、中国のことを怖いと思ってるのか?と問い詰める中国人との会話。単に事実を言っているだけだと日本人は言っているが、その裏の感情を指摘されて、微妙な空気になる。
 3番目のループ。中国の観光地を聞く日本人。天・安・門とわざと区切って発音。万里の長城の横にある90度の坂の名所を説明する中国人。それに対して前のめりの喋りと身体で相槌をうつ男。「あー凄いですね。行ってみたい。ミステリアスって感じ?」中国人にほんとにそう思っていますか?と聞き返される。「ほんとにそう、思っていますか。。。」(私の頭の中ではこのセリフがエコー気味にだんだんとフェードアウトしていくように思えて面白かった)そしてわざと静止。
DSC_0854.JPG 4番目のループ。日本人の女三人組が写真撮影されるときのようなフォーメーションを組んで、パンダについて次々と一人の中国人の男に質問してくる。男はその質問に一つ一つ答えていく。ループの後半には何も答えず終始無言だったりするが、最後には魯迅の、木を見て森を見ず、みたいなことをお爺さんが言っていたと話して、暗転。
 帽子を目深に被った中国出身の女性。唯一ループする事が全くない女性で(おそらく舞台上での場所、行動などが、繰り返しを避けるために念入りに演出されている。)舞台上を所在無げに、ブラブラしたり、自転車に乗って走り回ったりしているが、中盤で一人語りが始まる。なんだか重い内容だが、内容はリアルでもフェイクでもどちらでも良い。それより話の途中に身体にだんだんと力が入っていくのだが、その力の入れようのコントロールの過程が見えるのが、今回の作品の一つの見せ場だと思った。そして語り終えると、ふっと退場してもう舞台に出てこないところも見事だった。


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 他の4組の会話のリピートは、4,5回、同じ会話を繰り返すのだが、繰り返されるたびに、演者の笑顔がフェードアウトして消えていく。その消えていく過程の演技を楽しむ作品だと思ったが、5回では少ない気がした。せめて10回はしないと、変化のグラデーションの過程から観客が受けとれる「もの」が少なすぎると思う。
 以上の内容から思うに、今回の試みでは中国人と日本人との微妙な(またははっきりとした)心情のすれ違い(軋轢)を扱っているように見えるが、それらは演出家にとっては素材に過ぎず、むしろ南京や天安門などの記号的な部分を扱う「わざとらしさ」からは、俳優自身の身体性の操作に対する演出、がはっきりと見えた。その意味で、やはり俳優による身体や感情の変化のコントロールを浮かび上がらせること(そしてそれを観客が味わう事)を主題とした作品だったように私には思われた。


(2017年5月27日掲載)
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川崎歩
いろいろする人。活動領域は、頻度が多い順に、現在は【SE>子育て>ダンス>ワークショップ講師>現代美術>演出>映像】。

アトリエ劇研アソシエイトアーティスト|村川拓也

『Fools speak while wise men listen』

演出|村川拓也
出演|
穐月萌 石井花果 出村良太
井上向日葵 川口航 黄冬姝
侯文勝 佐々木峻一 徐奥坤
諏訪七海 孫日環 南風盛もえ
桃地伸弥 劉青 楊慧


2017 年3月9日(木)~3月12日(日)

3月9日(木)  19:00-(A)
3月10日(金) 19:00-(B)
3月11日(土) 15:00-(A)
3月12日(日) 15:00-(B)

キャスト
A|
穐月萌 孫日環 石井花果
諏訪七海 南風盛もえ  徐奥坤
出村良太 侯文勝 川口航
黄冬姝 楊慧

B|
穐月萌 孫日環 石井花果
諏訪七海 井上向日葵  徐奥坤
佐々木峻一 劉青 林伸弥
侯文勝 楊慧

「日本人と中国人の対話を描き、互いの小さな気だるさを眼前の現実として暴露する。
2017年に上演予定の〈日本・中国・韓国〉に関わる新作公演に向けた作品への系譜として、
東京-京都の2都市で再演。

2016年9月に京都のアトリエ劇研にて上演された『Fools speak while wise men listen』という作品を、東京と京都の2都市で再演します。
この作品は、若手の俳優を目的とする「劇研アクターズラボ」という企画の中で製作されましたが、やがて稽古場での関心は、日本と中国の関係について考える事に向かいました。それは、2017年の秋に京都で上演が予定されている、〈日本・中国・韓国〉に関わる村川拓也の新作公演に向けて必要な過程であり、同時に、演劇がどのように現在に関わるのかを考えるために、不可欠な関心であったのかもしれません。

「なんで中国なのか」とか「そんなこと問題にしなくてもいいんじゃないか」とかそういう雰囲気がありますが、いやすでに日本人はそれぞれ個人的に中国や中国人に対して解決しがたい問題を抱えているはずだし、実はその問題に対して小さな答えをすでに持っているような気がします。中国人も同様に、日本や日本人に対して別の問題と小さな答えを個人的にすでに持っているのではないかと思います。
彼らは同じ舞台に立ち、向かい合い、対話を始めます。
村川拓也