西尾佳織

鳥公園

劇作家・演出家、鳥公園主宰。
1985年東京生まれ。幼少期をマレーシアで過ごす。
2007年に鳥公園を結成以降、全作品の脚本・演出を担当。「正しさ」から外れながらも確かに存在するものたちに、少しトボケた角度から、柔らかな光を当てようと試みている。生理的感覚やモノの質感をそのままに手渡す言葉と、空間の持つ必然性に寄り添い、「存在してしまっていること」 にどこまでも付き合う演出が特徴。
鳥公園以外の参加作品にカトリ企画『紙風船文様』(演出)、F/T14『透明な隣人~8-エイト-によせて~』(作・演出)など。『カンロ』にて、第58回岸田國士戯曲賞最終候補作品にノミネート。

鳥公園


公演予定

鳥公園#11『緑子の部屋』
2015年8月6日(木)〜8月10日(月)

ある日、緑子がいなくなりました。
交錯する、緑子の友人、恋人、兄の言葉と記憶。話すほど、遠のきます。緑子の不在、ポッカーン。

鳥公園#11『緑子の部屋』

過去につくった作品を再演するということに、きちんと取り組もうと思います。そういうことにも興味が出てきたという理由に加え、それが出来ないと先がない、と感じるからです。


 鳥公園を始めてからこれまで、新作ばかりやり続けてきました。新作をつくることは、いつも楽しくてしんどいです。楽しい方面も苦しい方面も(といっても9割9分9厘苦しい方面ですが)、刺激がいっぱいです。その刺激で、身体も精神も動きます。何かに向かっている感・何かをやろうとしてる感が強くあります。でもその「何か」がなんなのか、深く知って味わって実現するところまで、千秋楽までではなかなか行けません。新作ってそういうものだと思います。


 それでもやっぱり新作をつくる快楽はすごいものがあるので(といっても、しつこいですが9割9分9厘苦しい方面ですが)、「あたし、つくる!」を続けてきたわけですが、ふと、「でもこれ、特に新しくないな」と思ってしまいました。同じようなことを新しくゼロから始めては同じような地点でタイムアップを迎え、を繰り返しているぞ、と思いました。やりたいことはもっと新しくて広くて深遠な射程を持っているはずなのに、それがどうも十全に実現されるまでには至っていない。
 これまではそうしか出来なかった、とも思います。私は、自分の作家的な才能を燃料に、ここまで来たような気がします。たぶん言葉が一番得意なので、そういうもので何がしかの魅力(世界観とか言われるようなもの)を少しは生み出せたのかもしれませんが、それでやれるのはここらへんが限界で、でも演劇なら、もっと行けると思うのです。演劇ならというのはつまり、声と身体をもってそこに立つ俳優がいるのなら、という意味です。


 この数年で、私は少しずつ俳優に出会い、俳優を求めることが出来るようになってきました。演出家として俳優と仕事をするということを、俳優に教わりました。ある作品において俳優が、本当に俳優にしか担えない領域に達する仕事を出来るようになるのには、時間がかかります。それをしたいと思い、今回この「緑子の部屋」を再演することにしました。きっと私自身も俳優たちも、「こいつはこんな作品であったか!」と発見することになると思います。皆さん、是非見にいらしてください。




作・演出 西尾佳織